ノマドワーカーは最高なのだろうけれど最強ではなくて、正社員もなにかとメリットがあるよねって話
ノマドワーカーという言葉はまあ浸透して久しい。
まだ浸透というほど浸透していないかもしれないけれど、少し前と比べればかなり浸透してきたと言ってもいいでしょう。
ノマドワーカーとは簡単に言うと「どこででもいつでも働ける職種の人」。
場所や時間を選ばない仕事人。それがノマドワーカー。
日本では在宅ワークなんて言葉で言われているけれど、その種の仕事はだいたいが「在宅」でなくともPC一台あればできるので、まあ名が体を表していません。
それはともかくとして、つまりは、自宅、喫茶店、果ては公園のベンチででもできる(さすがにできない場合もあるけれど)のがノマドワーカーなのです。
しかも、自分の好きな時間に働けるので、これはまさに自由な働き方。
働き方改革とはこの形態を目指すべき! ・・・とでも言いたくなるような自由さなのですけれども、無論、デメリットもあります。
確かにここまでのものを見ると「最高」ではあるのですけれど、こと日本という国では古式ゆかしい風習や世論、経済システムが根付いているため「最強」とは言えない面もあるのです。
諸外国だと状況は違うのかも知れませんが(知らないのであまり言えない・・・)、とにかく、日本ではノマドワーカーは最高だけれど最強ではないよなって話を以下にしていきましょうか。
目次
1.ノマドワーカーのデメリットは見えづらい
まず、ノマドワーカーのデメリットてのは非常に見えづらいのです。
なぜならば、ノマドワーカーというのはまず絶対数が少ない。
そんな中にはインフルエンサーといって大きな発言力を持つ人もいますけれど、そういった人たちの情報しか手に入らず、能力が高くない、まだ芽が出ていない人の苦労だとかってのはまずもって取り上げられないのです。
一方で、正社員や派遣社員などは日本の労働者人口の大半を占めており、能力の高低関係なくさまざまな視点からの情報が数多く飛び交っており、良い面悪い面双方ともに情報が手に入りやすい状況にあるのです。
そんな状態ですので、正社員などのデメリットは見付けやすく、ノマドワーカーのデメリットは見付けづらい状況ができあがり、「ノマドワーカー最高最強」論に行き着きやすい。
ですけれど、それは結構危なかったりします。
パッと情報を仕入れただけでは、ノマドワーカーというのは何にも縛られずに自由な印象がありますけれど、実際には時間と場所以外での縛りや面倒ごとは正社員よりも遥かに多いのです。
たとえば、ノマドワーカーとなる会社や組織に所属して・・・という形にはなりづらいですからそうなると税金の面倒が考えられます。
税金の申請は、法人でなく個人事業主であればまだ簡単とは言いますけれどもそれでも社員のように何も考えずにってわけにはいかなくなります。
次に、会社や組織に所属しないとなると、保険料や年金の控除が受けられませんので、サラリーマンの給与明細に書かれている保険料や年金よりも高額な金額を支払わなければならなくなります。
安くとも毎月数万円の差が出てきますので、これは結構な痛手です。
そして、最後に、終身雇用やなんやらといった、日本ならではの労働者的セーフティーネットが一切ないというところも注意しなければなりません。
会社、組織に属しないというのは、最後まで自分で自分の面倒を見なければならないということでもあります。
いざという時に底力で這い上がれないような方には向いていないかもしれません。
以上のように、社員とは違って面倒ごとやリスクってのは多くなります。
ですので、そうした面倒ごとをこなせない方、リスクに対して対応できない方、にとってはなかなか難しいところがあります。
2.正社員のメリット
さて、ノマドワーカーと比べるとデメリットがかなり取り沙汰されてしまう正社員ですけれど、メリットはとても多くあります。
まず第一に、保険料や年金の一部を肩代わりしてくれる。
これは、多くの方々が会社員として働いている昨今では気付かれにくいでしょうけれど、会社員は相当な金額を支払わずに済んでいます。
一人暮らしのひと月の食費程度は賄えるレベルですので、相当なメリットです。
次に、終身雇用や失業保険といったセーフティネットがある。
終身雇用制度で能力の高低に関わらず解雇理由となるようなことがなければクビになることはありません。
ですので、特に大きな頑張りなどしなくとも食いっぱぐれることが少ないのです。
それに、就業していた、就業意欲があるという実績があるだけでも保険やその他の保障が非常に豊富にあります。
働いている分には分かりませんけれども、これも大きなメリットです。
最後に、多少の失敗や休日があっても一定の金額が毎月支払われる。
当たり前のことですけれど、会社や組織に属しないノマドワーカーと比較する際にはこれが最大級のメリットとなり得ます。
失敗や休日、病欠などがノマドワーカーであった場合はもうどうしようもありません。
それまでに対策、実績が構築できていれば別ですけれど、それがないまだ低収入の段階で失敗や病床に伏す事態があったりすると、収入の減少に直結します。
一方で、社員であればそんなことはありませんよね。
有給休暇といったシステムもありますし、多少失敗しても相当な損害や解雇事由に繋がるものでもなければ継続して毎月安定した収入を得られます。
こうして見ると、社員から見れば「当たり前」で見えにくく、感じにくくなっていることが、少し労働形態を変えた視点から見るだけで大きなメリットに見えてくることが分かります。
ですので、多面的に捉えた上でどちらを選択するか決めていく必要があります。
3.日本だからこそ、ノマドは最高に見える
そんなノマドワーカーですけれど、これが最高に見えるのは日本だからこそでもあります。
いや、それは世界共通で「自宅で好きな時間に働いてお金が貰えるのはいいな」という感情はあるのでしょうけれど、中でも日本ではこうした形態は最高に見えがちです。
なぜかというと、言わずもがな。
日本では、あまりにも企業に就職することで受ける拘束が大き過ぎる。
日本ならではの古式ゆかしい飲みニケ―ション(笑)や残業の常態化、バブル期に歳を重ねた感覚のズレた上司や先輩との人間関係などなど・・・枚挙に暇がない。
こうした時間的、空間的、人間関係的拘束、ストレスが日本の企業では非常に大きく、こうしたところと対極にあるノマドワーカーはとても素晴らしいものに見えてくるわけです。
ということなので、ある意味、社員として働いたりしている方、もしくはネットで正社員や派遣社員のデメリットや嘆きばかり目にしている方にしてみれば、そういった「日本の労働形態フィルター」が掛かった状態にあるのです。
そんな状態でノマドワーカーのメリットばかり見てしまえば、それはもうハンパじゃなく素晴らしく、自分もなりたいと思ってしまう。
ですけれど、それはあくまでもフィルターがあるからこそとんでもなく素晴らしく見えるだけで、ちゃんとデメリットが存在するのです。
そのデメリットも人によって乗り越えられる、乗り越えられない、さまざまですので、フィルターを一回取っ払って、ちゃんとした澄んだ瞳で双方を比べ、自分の性格などと照らし合わせてから行動を起こした方が無難でしょう。
4.まとめ
・ノマドワーカーもデメリットがある
・正社員のメリットは見えていないだけ
・日本の社員が拘束され過ぎだからこそ、相対的にノマドが最高
まとめは以上です。
ちゃんとした眼でメリット、デメリットを冷静に考えれば良いのですけれど、現状ではなかなかノマドワーカーの十分な情報(特にデメリット)が流れてきませんし、一方で社員が過剰に忌み嫌われがちです。
ネット上から得られる情報は偏ってしまいますが、そうしたフィルターを排して汚れなき眼で世界を見ていきましょう。
その上で判断すれば、よっぽど早期に挫折することはないでしょう。
その先に続いていくかどうかは、決断とはまた別ですけれど。