【百合漫画】「やがて君になる」5巻 燈子を変えるために動き出す侑! しかし燈子は・・・ そして沙弥香さんがまた尊過ぎるんですけど
「やがて君になる」5巻のレビューになります。
4巻のラストで
「私の嫌いなものを好きな人のこと、好きになれるわけない」
と、暗に「自分のことが嫌い」と言った七海燈子に対して、小糸侑は自分の秘めたる気持ちと共に「先輩を変えたい」と心に決めました。
5巻ではその続き。
行動力のある侑は燈子を変えるために早速動き出します。
これまでは燈子に振り回されて、燈子のためではないとはいえ燈子の良いように、望むように接していた侑。
ここからはいよいよ侑のターン。
侑が燈子を変えようとしていきます。
また、5巻に関しては直接的な百合成分は少ない。
キスとか抱き合ったりとか、そういったものは少ないです。
ちょっと残念だけれど、精神的な面というか感情的な面での百合的な成分はとても多いので、百合に尊さを感じるというよりは、やきもきする回ですね。
以下、ネタバレ注意の詳細レビュー。
↓前巻ネタバレレビュー↓
↓次巻ネタバレレビュー↓
目次
1.燈子と侑の水族館デート
第五巻の始まりのイベントは二人のデート。
夏休み。
姉の墓参りで感傷的になっていた燈子と、燈子のために生徒会劇の脚本を変えようとした侑が、二人がお互いに会いたがって、デートをすることに。
以下、前半あらすじ。
夏休み中。
燈子は姉の墓前にて姉ができなかったこと(生徒会劇)をすると報告していました。
「そしたら・・・私は?」
一方で侑はその頃、こよみと脚本の結末を変える相談をしていました。
新しい脚本の方向性が決まったところで、侑はこれに対して燈子がどう思うだろうと考えていました。
そんな侑は燈子に「どこか遊びに行きませんか」と誘います。
ーーーー
二人が来たのは水族館。
水族館を一通り楽しんだあと、二人はカフェでまったりします。
水族館だけじゃなく、いろいろなところに侑と行きたい。
「侑が好き」
そう言う燈子に侑は「よくさらっと言えますね」と尋ねます。
「好きって言うと安心するんだよ」
燈子は自分が姉を演じていることを自覚しているので、他の全部が自分ではない「にせもの」なのだと言いました。
「侑のこと好きな部分は私だって言い切れる」
だから、安心なのだと。
以上、あらすじでした。
デート中、水族館ということで会話がいつもよりも少なめで、けれど、侑が燈子の手を引っ張って歩くところなど・・・あらすじには書きにくいですが大変良かったです。
この水族館デート、何気ないようで割と重要だと思います。
夏休みが終わりかけ、二人はそれぞれの事情からお互いに会いたくなります。
ここで、初めて「侑から誘う」ってことが起こるわけですよ。
これまでは燈子から誘っていたけれど、ここでは侑から誘っている。
いや、徐々に侑のターンに回ってきたなということが感じ取れますね。
そして、水族館。
水族館での二人の話、燈子の危うさが出ています。
「侑のこと好きな部分は私だって言い切れる」
これ、百合的には最高なセリフですけれど、一人の人間として考えたときにはどうしようもなく依存的で危ういですよ。
いや、大好きですけどね、こういうセリフ。
2.脚本を変えよう!(提案)
燈子を変えるために侑は脚本を変えようとこよみと計画していまして。
そして、こよみが頑張った結果、新しい脚本ができました。
(こよみの有能っぷりよ・・・)
以下、中盤あらすじ。
夏休み明けの生徒会。
侑はこよみと共に生徒会の面々に新しい脚本を提案します。
変更前は
「記憶喪失で自分を失くした少女が、さまざまな周囲の人から記憶喪失前の自分を聞いて、最終的に恋人から聞いた自分を本当の自分だと決める」
物語だったものの最後を
「恋人から聞いた自分を本当の自分だと決める」
から
「これまでの私と同じ人間にはなれない」
「あなたたちともきっと同じ関係にはならない」
と、自分のために自分を決める物語に変更したのです。
生徒会の面々には好感触。でも、燈子だけは「前の方が良い」と言います。
「沙弥香はどう思う?」
「私は新しい脚本でやってみたい」
同意を求めるような燈子の言葉に、沙弥香はそう答えました。
生徒会会議後、侑は沙弥香に脚本を変えた理由を尋ねられました。
「七海先輩が劇の主人公と自分を重ねてるみたいだったから・・・」
過去の自分を演じて生きていく結末が嫌だった、と侑は続けます。
「いつかお姉さんの真似をしなくて良くなる日が来るといいなと思います」
ーーー
佐伯家。
侑の思いを聞いた沙弥香は、自分が新しい脚本に賛成したことを回想します。
(小糸さんは燈子の願いを理解した上で、この脚本をぶつけた)
燈子の願いとは真逆のわがままのようなものだとしても。
(私の願いも小糸さんと同じ。燈子に変わってほしい)
(なのにどうして その願いを伝えるのが私じゃなかった)
以上、中盤のあらすじでした。
変更した脚本を見せるのは侑回かと思ったら沙弥香回でした。
劇の主人公は最終的に「誰かから見た過去の自分」を選んでいた結末。
それを、「今からの新しい自分を受け入れる」を選ぶ結末に変えている。
これ、燈子にとっては「姉の後を追って姉になろうとしている自分」だからこそ、変更前の劇の主人公には共感していたんですが。
変更後の結末ではお分かりの通り、燈子にできないこと、燈子の望んでいないこと、を劇の主人公を通して突きつけられている形になります。
けれど、燈子が「姉でなく燈子らしくなる」ことは侑や沙弥香の願いなわけです。
当然、燈子は拒否しますよね。
でも、ここで親友の沙弥香が燈子の同意を求める声に異を唱える。
まさか、親友の沙弥香が否定とはなぁ・・・
と、思いきや、尊いですよ、沙弥香の思考が。
(私の願いも小糸さんと同じ。燈子に変わってほしい)
(なのにどうして その願いを伝えるのが私じゃなかった)
こんなもん、負けフラグだらけの親友キャラとはいえ、この嫉妬の仕方は本当に尊いっていうか「本当に沙弥香は燈子が好きなんだな」と分かります。
沙弥香、ほんと良い。
負けキャラですけど、真摯な想いがあって、それを伝えることもできないけれど本当は誰よりも(この漫画では珍しく)「燈子を好き」なキャラなんですよね。
3.燈子の思いと侑の願い
最後に、脚本を変えたことで、燈子の思いと侑の願いがぶつかります。
いつもいつも良いところで引きますな、この漫画は。
以下、後半あらすじです。
生徒会室の外で一人、新しい脚本のセリフ練習をする燈子。
まるでこれまでの自分を否定するようなセリフの内容を言いながら、
(私のこれまでやってきたことが間違ってるって言いたいの?)
「手伝ってくれるって言ったくせに・・・」
と、燈子は表情を曇らせました。
ーーー
燈子と沙弥香が二人の時。
燈子は沙弥香に
「脚本の変更なんて反対してくれたらもっと楽だったのに」
とあてつけるように言います。
沙弥香は燈子を諭しますが
「もういいよ 沙弥香も侑も私が間違ってるって言う」
と言ってそこから離れてしまいます。
ーーー
燈子は侑を見付けて、侑を屋上まで引っ張っていきました。
「キスさせて」
「好きでいさせて」
「自分が自分だって言えることがほかに何もわからない」
と、燈子は弱ったように言いました。
キスしようとする燈子に、侑は
「しません」
と、強く言います。
「そんなことして確かめなくたって先輩は大丈夫です」
「ほかに何も無いなんて思ってほしくない」
みんなの気持ちや期待は、燈子が姉の真似をしてきた結果ではなく、燈子自身に宛てたものなのだと、侑は燈子を諭します。
「もらったものを無かったことに しないでください」
以上、後半のあらすじでした。
今回も最後は侑の至言です。
相変わらずというか、侑は実家が本屋なだけに侑の言語表現は綺麗です。
燈子は新しい脚本を見て、自分が否定されているように感じます。
まあ、変更前の脚本に感情移入していた分、そう強く感じるのでしょう。
それで、侑に対して「手伝ってくれるって言ったのに」などと・・・これは不信感のように見えますけど、どちらかと言うと悲しんでいるような印象。
侑には何でも受け入れて欲しかったんでしょうな。
そして、次のシーンでは燈子は沙弥香からさえも逃げ出します。
・・・沙弥香には燈子を引き留めるなんて無理だったのでしょう。
ここで沙弥香の心情を考えると、燈子の親友で燈子の近くにいられれば良かっただけと思っていたのですから、逃げ出そうとする燈子を引き留めるような強い言葉なんて掛けられるはずがありません。
侑なら掛けられる言葉も、侑なら燈子に言える願いも。
きっと、沙弥香にはそんなことできないのでしょう。
あー、沙弥香さん良いわぁ。
で、最後は侑と燈子。
燈子さん、相当やられています。
姉の代わりになることをアイデンティティとしていたのに、4巻で実際の姉はそうでもないことが分かり、今回は侑や沙弥香からも否定されましたから。
そんな燈子に、侑の優しい言葉。
「ほかに何も無いなんて思ってほしくない」
カッコいい。
侑のこういうところ、気付かない内に燈子は惹かれているんだと思います。
ただ「好きと言わない」だけじゃなく、それ以外の部分に。
侑の言葉で燈子は劇に前向きになれるのですから。
「もらったものを無かったことに しないでください」
はい、もう、これね、至言。
この一言で燈子はどれだけ救われたような気持になったか。
そうでなくとも、少なくとも劇に対する考え方は変わったでしょう。
前向きに。
やはり、燈子には侑がいなければいけないのでしょうね。
いつかの燈子の言葉に表されているように
「私は君じゃないとやだけど 君はそうじゃないから」
4.(個人的感想)侑のカッコ良さ。燈子はますますヒロイン。沙弥香は尊いなぁ。
今回は全編通して直接的な百合は少ないですな。
キスや抱き締め合ったりというのは基本的に燈子主導で行われていたので、ここで侑のターンに回ってきたのでそういったものは少ないです。
だがしかし!
いやー今回はこれまででいっとう尊い回でもありましたよ。
肉体的な接触ってのは絵に惹かれますけれど、こう、セリフ回しとか表情とか心情の吐露ってのは最高に悶々とできて好きです。
今回の尊いポイント、その一。
侑が燈子のためにカッコいい!
ここですよ。
最初に初めて侑から燈子を誘うようになったところでもう尊いのですが。
中盤以降、侑は燈子に変えた脚本をぶつけ、侑は燈子を変えるために頑張る。
これまで燈子に振り回され、それが心地良くて、けれど、好きにはなれなくて。
しかし、ここからは侑から燈子に関わるようになってくる。
この変化がもう、ね。
そしてなんといっても最後のシーン。
キスしようとする燈子にピシャリ
「しません」
このシーンで明らかに燈子に対する態度を改めたのが伝わってきます。
キスをするのが尊さの定石だけれど、ここでは精神的に「燈子と向き合うようになった」という心境の変化が尊いですなぁ。
ここのキッと燈子を叱るような侑の目が印象的です。
今回の尊いポイント、その二。
燈子のヒロイン感がいよいよ増してキタ!
燈子が侑の行動で心が揺さぶられるようになってきています。
形勢逆転と言うか、こう、ヒロインしてるなぁって感じですよ。
侑の行動のせいで精神的に危うくなってきている。
けれど、それは侑から燈子に対する願いであり、それを侑から突き付けられて、諭されて、結局は侑の言葉で落ち着かされる。
燈子が、侑に振り回されるようになってきたんですよ、ここから。
これまでは燈子が侑を「ただ好きだから」という理由で振り回してきた。
けれど、ここからは侑の「燈子を変えるため」という思いに変えられるようになる。
ヒロインですねこれは・・・。
今回の尊いポイント、その三。
沙弥香が、もう、ほんと健気で尊過ぎるよ!
沙弥香ね、まさかの伏兵ってか、キャラの中で最高に尊い存在。
侑と燈子の二人が王道を行く百合カップルですけれど、沙弥香は負けキャラとしてはあまりにも健気で燈子思いです。
燈子の一番近くにいられればそれでいい。
燈子は誰の特別にもならないから、その間は私が一番近くにいられる。
こうした思いを持ちながら、その思いを隠しつつ、燈子に負けず劣らずの優等生。
常に燈子の近くにいられる大親友。
あ~、もうこれ、最高に尊すぎるでしょう!
そして今回ではこのシーン。
(私の願いも小糸さんと同じ。燈子に変わってほしい)
(なのにどうして その願いを伝えるのが私じゃなかった)
自分の部屋でこう思いながら悔しがる沙弥香さん。
(その願いを伝えるのが私じゃなかった)
ここ!
どれだけ燈子思ってたんですか沙弥香さん・・・なんて、なんて、尊い・・・
はい、ということで今回はこれまででいっとう尊い巻でした。
控えめに言って最高。
まとめ買いもあるでよ