「うつ病患者に一億円あげれば治る」ってのは一部にとってはあながち間違いじゃない ※僕の経験に添えて

 今回の議題はこれです。

 うつ病、認知度もすっかり上がったれっきとした病気です。今時、これを「甘え」とか言っている人は少ないでしょうな。一昔前まではそんなことが言われることもありましたけれども、今や精神的な病気だと広く認知されている。

 そんな折、うつ病患者に対して「一億でも握らせれば治る」とかいう話がネット上では散見されるようになった。これは、うつ病患者に50ユーロ(約6500円)を毎日支給し続けたら症状が緩和されてきたというスウェーデンの論文が出たことからも影響を受けているのだろう。

▼ 参考論文 ▼

https://www.researchgate.net/publication/282573312_Money_and_Mental_Illness_A_Study_of_the_Relationship_Between_Poverty_and_Serious_Psychological_Problems

 さて、そういうわけなので、「お金さえあればうつ病は治る」なんて論が飛び出してくるのだけれど、そんなわけはない。

 うつ病にだって「なぜそうなったのか?」など原因や環境、もしくは病気としてどうかっていろいろ種類がある。その中にはお金だけではどうしようもならない原因だってあるだろう。

 そして、あと「治る」って表現もこれまたよろしくない。基本的に完治なんてなかなかあり得ない。いつか同じような状況、または別の要因で抑うつ状態になってしまうことがある。つまり、再発。

 再発というよりはむしろ「良くなる、悪くなる」があって、結果、良くなっても悪くなる時が来るというような考えた方がいいのかもしれない。誰でもなる可能性があり、治ったように見えてもまたなる可能性がなくなるわけではない。

 身体的な病気とは違い、うつ病とはそういうものだ。治った、治らない、できっぱりとボーダーを決められるものではないのだ。

 そんなうつ病について、僕の経験を元に「お金で治る」ってのは表現として適切ではないけれども、まあとても広く意味を解釈すれば間違いでもないケースがあるってのを解説していこう。

※僕は専門家ではありません。あくまでも以下は経験を元に書く個人的なものです。

 

目次

 

 

1.抑うつ状態になった経緯と状態

 こっからは僕の経験を主に語っていこう。

 抑うつ状態になったきっかけはよくある話。就活うつだ。

 そもそも、大学時代、創作系の職業に興味をもって寝る間も惜しんで頑張っていたのだけれど、結局、自分の中で設定していたタイムリミット就職活動開始までってのが来てしまった。

 その時点でちょっともう精神的にしんどかったのだけれど、会社選びでは目指していたが大学の学部とかとはまったく縁のない業界に興味を持ってしまったがために、第一、第二、どんどんと志望していた会社には落ちていった。無論、資格とかはない。そういったものをかなぐり捨てて大学時代はずっと創作していたのだから仕方ない。

 そして、まあ、夏に差し掛かる辺りには立派に意気消沈、だるい体を引っ張り上げて重たい腕に更に重たい鞄を引っ提げ、全身を引きずるようにして面接に向かう以外は自室で丸まっていた。すっかり抑うつ状態だった。

 あの、経験したことない人は分からないかもしれない。けれど、一度経験するとはっきりと分かる。抑うつで本格的に思考が抑制される前に「あ、これうつだ・・・」と自覚できるのだ。普段の落ち込みとかとは明らかに違う、「うつ」の自覚。

 腕は鉛のように重く、力を入れて持ち上げようとしても全く入らない。おまけに感覚はまるで痺れたように鈍感になっていく。比喩でもなく文字通り、床で丸まってましたよ、当時は

 不思議なもので、思考が抑制されているにも関わらずネガティブな単語だけはやけにしっかりと現実感を持って思考できた。ポジティブな未来や言葉は一切合切、考えようとしても泡のように消えてしまうのに、ネガティブな言葉、死を連想させるような言葉ははっきりと思考できたし、それがまるで脳内で反響するように増幅していった。

 笑みは無理矢理に表情筋を動かして皮肉っぽいものを作るのがやっとだったのに、やたらと涙だけは頬を伝っていたのを覚えている。

 パソコンを起動することも、ゲームをやることも、気を紛らわせようとしても手が動かないのだから仕方がない。そもそも、そう思ったとしても一瞬でそんな気が失せてしまう

 寝ているしかない。脳みそを動かさないよう出来得る限り無にして、眠るのを待つしかない。体は疲れていないし、目は冴えに冴えて、脳は勝手にマイナス思考を始めるけれど、眠るのを待って丸まっているしかなかった。

 まあ、秋口に妥協に妥協を重ねた就職先が見付かったので、それからは徐々に快方に向かっていったのだけれど、春から夏休み中に掛けては地獄であった。

 

2.「お金があれば治る」とはなぜか

 僕のようなケースの場合、「お金があれば治る」の最たるものだろう。いや、冒頭で書いた通り、治るのではなくあくまでも快方に向かうって話だけれど。

 なぜ「お金があれば治る」ケースかってのを以下に見ていこう。

 まず、僕の抑うつ状態になった原因を分析していこう。

・主要因は将来に対する不安

・副要因は夢を追えなくなる(人生の時間に対する焦燥感)

 僕が自分なりに考えた結果、この二つによるところが大きい。というより、これ以外の要因ってのはほとんどない。まあ、家族が認知症になったから家庭内が殺伐としていたとかもストレスとなっていたけれど、うつになるきっかけとしては上の二つだ。

 さて、この二つ、両方とも結局は「自分のこれからに対する不安」である。不安というか、無常観、どうしようもないって感情の方が大きい。

 けれど、これ、お金があれば解決するものです。

 将来に対する不安ってのは「就職しなければならないのにできない」って状況からくるものだ。これ、僕としては「生きるためには働いて稼がなきゃ」って思考からくるもので、つまり、「自由に使えるお金があれば生きていける、この不安を先延ばしにできる」ってことだ。お金があれば解消できたのだ。

 これがたとえば「良いところに就職しろという圧力に屈して・・・」って人だったらお金を貰っても快方には向かえなかっただろう。

 次に、「夢を追えなくなる、人生の時間が少ない」って感覚からくるもの。これも、主要因の方と関連があるのだけれど、お金があれば「就職を先延ばしにできれば、より有意義な人生の時間を得られる」ってことで解消できただろう。

 これがもし、「時間をつぎ込めばなんとかなりそうな夢じゃない・・・」ってことだったら、それはお金を貰っても自分のスキルに絶望してしまい、快方には向かわないだろう。

 つまり、そういうことで、上記のような原因から抑うつ状態になっていた僕のケースに限って言えば、「お金があれば治る」ってのはあながち間違ってはいないと言える。

 無論、治らなかった可能性もあるけれど。でも、少なくとも僕の原因を取り除くには一億円を貰えれば十分だったと考えている。

 

3.ケースによるが、お金は現代社会において大き過ぎる

 さて、「お金があれば治る」って論は、良くも悪くもお金の存在が現代社会において大き過ぎるし、大抵の問題を解決できてしまうって辺りからくる暴論である。

 しかし、お金で解決できる問題が多いのもまた事実。

 一応断っておくが、「お金が貰えたから治る」と言うと明らかな説明不足。「お金が貰えた結果として不安や絶望が解消されたから、治る」って言わないと、まるで金の亡者のように見えてしまう。・・・まあ、この辺から「甘え」とかの言葉が出てきてしまうのだろうけど。

 んで、僕にとってはお金で解決できる原因を持ったケースだったけれど、そうじゃない場合も多々あれば、そうである場合も多々ある。様々だ。

 最初に書いたように、お金は現代社会において多くの問題を解決できる。だから、――うつ病患者に偏見を持っているわけではないけれど――もしかすると、結構な数の抑うつ状態の方は、自由に使える大金があれば全快とまではいかないまでも快方に向かうことができるのではないだろうか

 あくまでも、一つの方法としてだけど。でも、やはり、お金だけで解決できる問題ばかりでないのも事実。

 もちろん、時間や環境、人が必要な場合があることも多い。むしろ、そうした状態の人の方が多いと思う。特に人や環境については。

 けれど、まず根底にある「現在から将来までの不安」ってのを緩和させる手段として、多くの生活面、社会面での問題を解決できるお金ってのは多少なりとも効果があると考えられる。

 

4.まとめ

・お金で快方に向かう場合もあると考えられる

・だが、あくまでもうつの原因や環境に合致した場合のみ効果的

ってことだ。何度も言うけれど、専門家じゃない経験者の一個人の意見として。

 さて、今では「甘え」とか言われることが少なくなったけれど、未だにそういうことがあることはある。「お金」ってワードは「甘え」に繋げやすいものなのだろう。

 けれど、勘違いしてはならない。

「お金」は原因を取り除く手段だ。それ自体を望んでいるから、快方に向かうってわけではない。あくまで手段。そこが重要。

 特にここ、経験者として声を大にして言っていきたいですね。

 お金自体は望んではいない。原因の解消を望んでいるのだ。

 以上。